「あの子はアキじゃない。
アキにはなれない。
だから……深入りしないほうがいい。
それが……禅のためよ」
そのとおりだ。
愛美の言っていることは間違っていない。
「それでも……」
オレは何を言いたいのだろう?
オレは何を言おうとしている?
そうなんだ。
それでも……それでも彼女を知りたい衝動をもはやオレは押さえられないでいた。
「アキじゃないのは分かってるよ。
だから余計に探したいんだ」
アキじゃない。
アキにはなれない。
それでも彼女の中に『アキ』がいるような気がしてならないのだ。
「きっと後悔するわ」
悲しむ顔を見たくない。
辛くなる姿を見たくない。
そんな声なき声が愛美の瞳を通して聞こえてくる。



