「お疲れ様」
そう声を掛けられて、オレは振り返った。
「ああ……愛……じゃなかった、江口先生だったっけな」
傍らに立ったスーツ姿の愛美にオレは小さく笑みを返す。
「どう、初日は?」
「先輩教師ってかんじだなぁ」
「あら、まったくそのとおりじゃない?」
愛美はそう言うと、クスッとほほ笑んで見せた。
「そう言えば……江口先生は2年生の担当だったよな?」
その質問に、一瞬愛美の顔が曇ったように感じたが、すぐにその表情は元に戻り「2-Cの副担だけど」と答えた。
「そっか……2-Cか」
「どうかしたの?」
愛美は笑顔のまま、オレに聞いた。
その笑顔にオレはぽつりと彼女の名前を口にしていた。
「杉谷樹里って……どんな生徒?」
オレの質問に、今度こそ愛美の笑顔が固まった。
「なんでそんなこと聞くの?」
愛美の口からこぼれた質問に、今度はオレ自身が答えに詰まる。



