オレはもう一度彼女の絵をとって見た。
青い空。
青い海。
その境界がぼやけて滲んだ瑠璃色の世界。
「先生……」
キミの目に映った世界。
キミが感じた世界。
キミはこの世界の中心にきっといるのだろうね。
輝いて
煌めいて
何もかもが美しく見える世界。
彼女を失う前のオレが見ていた世界。
忘れようと努力して
それでも忘れたくなかった世界。
オレもそこに行けるだろうか?
オレももう一度、望んでもいいのだろうか?
キミに近づいたら
キミと一緒なら
もう一度、その世界に辿りつけるだろうか?
「もう、一歩は……踏み出したかもしれません」
そっと絵を置いて、窓の外を見た。
オレの目に映るのは相変わらず灰色に近い水色の空。
それでもうっすらと世界は色づき始めたのかもしれないと……
そう感じずにはいられなかった。



