『一歩前へ出てみたら』
広がるのは灰色の世界。
『世界は変わるかもしれない』
変えたいと思うのはなぜだろう?
アキを失ったこの世界はこんなにも辛いのに。
それを痛いほど感じるのに。
『空、好きですか?』
不意に浮かんだのはさっきの女生徒の言葉だった。
「オレの絵を欲しいと言った生徒は……彼女に似てますか?」
なんとなく、彼女のような気がした。
いや、たぶん。
オレはそれが彼女であってほしいと思ったんだ。
先生をじっと見つめる。
先生は黙ったまま、小さく頷いた。
「そう……ですか」
消えたはずの灯火。
それが胸の奥……ずっと奥の方で小さくくすぶり始める。



