「どうする?」
そう聞かれ、オレは振り返った。
「どうするもこうするも……先生の好きになさっていただいて構わないですよ。
二度と目にすることがないほうが……楽になれますから」
眩しすぎる太陽。
眩しすぎる水面。
今も瞼の裏に焼き付いて離れないあの頃の思い出と場面たち。
描こうと思えばいくらだって描ける風景画。
でも、あの頃のように
あの頃みたいに輝く風景としては描けない。
見れば想いは募り
見れば心が千々に引き裂かれる。
募る想いに、思い出に
縋りつきたくなる自分を見るのが辛すぎて
先生に処分をお願いした絵。
けれど先生も処分は出来なくて
ずっとずっとこの部屋の隅っこで眠り続けている。
「欲しいというのなら……あげてください」
この絵に詰まったオレの気持ちごと、持っていってもらえばいい。
「誰が欲しいとか……興味ないのか?」
市川先生の言葉にオレは首を捻った。



