彼女の手を掴んだ自分の手が力を失い
彼女の手を離していた。
するりと滑るように彼女の手が離れ
温もりが消え去っていく。
彼女はオレをしばらく見つめた後
「すみませんでした……」
そう小さく零して頭を下げた。
それからパッとオレに背を向けると
逃げるようにその場から走り去っていった。
「違うんだ」
オレは彼女の背中に呟いていた。
言い訳だ。
言い訳なんだ。
それは分かってる。
「キミが悪いわけじゃないんだよ」
方向を変えた瞬間に見えた彼女の瞳に
うっすら涙が浮かんでいたのを
オレは見逃してはいなかったのに――
「すまない……」
苦しくなるのはキミを傷つけたからなのか?
それとも――
力なくぶら下がる拳をギュッと握りしめる。
走っていった彼女の背中はもう……オレの目には映っていなかった。



