過去が押し寄せる。
波のように
大きな波のように
過去がオレに押し寄せる。
『ゼン!! 私、青い空が好き!!』
アキが空を好きだと言ったから
オレも空が好きになった。
『ゼン!! 見て!!』
アキが空を見上げるから
オレも一緒に空を見上げるようになった。
『青い空……死んだら私、そこであなたを見つめることになるのね』
青い空。
キミが好きだと言った青い空。
それは彼女のいる空なんだ。
「瀬戸せんせ……?」
彼女が遠慮がちにオレを呼ぶ。
「オレも……空が『好きだった』」
言えなかった。
『好き』
という現在系では言えなかった。



