そろそろと立ちあがり
美術室の方へと足を向ける。
昼休みの騒々しい廊下を一人歩きながら
オレは彼女を探していた。
名前も知らない。
ましてクラスも知らない。
そのことに気付き、ふと立ち止まる。
学校中を駆け廻って彼女を探そうか?
でも、そこまでされたら彼女は迷惑だろうか?
余計な事が後から後から溢れだしてきて、戸惑いが生まれる。
その時だった。
「瀬戸せんせ!!」
オレの耳に飛び込んできた声に反射的に振り返る。
見開かれる瞼。
揺るぐことも
逸らすことも
避けることも出来ない視線。
思わず息を飲み込む。
彼女の口元がゆっくり動き
言葉を紡ぐ。
「空、好きですか?」



