震える指先に力を込め
震える鼓動を必死に抑え込んで
ただ一言。
「すまない……」
それだけ紡いで
その場に散らばった白い紙たちを拾い上げる。
彼女は同じように散らばった紙を
床に這いつくばるようにしながら一緒に拾い
トントンと揃えてからオレの手に「どうぞ」と渡してくれた。
「ありがとう」
笑うことが出来なかった。
彼女を見ることももう出来なかった。
素っ気なかったかもしれない。
冷たい対応だったかもしれない。
ただ受け取って
逃げるようにその場を離れた。
ドクドクと心臓が熱くたぎる血を
冷たくなり、固くなった末端へと送りこむ。
ギュッと掴んだ紙に
滲んだオレの掌の汗が張り付いた。
違う。
違う。
違う。
彼女じゃない。
アキじゃない。
それなのに――心臓が痛いくらい早く動いていた。



