悶々とする想いを抱え込んだまま
歩くオレの前方から、だだだっと騒がしい足音が向かってきた。
ショートカットの女子が
黒ぶち眼鏡を高らかに掲げ
弾ける笑みを口元に湛えたまま
オレの脇を駆け抜けていく。
「危ないなぁ……って。
廊下は走るなって……言ったほうがよかったかな?」
立ち止り、振り返る。
女生徒は次の角をまた曲がっていった。
注意するタイミングを完全に逃し
オレはぼりぼりと頭を掻いた。
教師としてこれで本当にやっていけるのかと
また不安になる。
「まいったな」
一人こぼしながら、また歩きだし
角を曲がろうとしたその時だった。
勢いよく曲がろうとするオレに突っ込んでくる影に
オレは避けることもできず
真正面からその影とぶつかってしまった。
あまりの勢いに手にしていた白いプリントたちが宙を舞う。
その合間に――オレが見たのは。



