瑠璃色の世界でキミを抱きしめる~先生、私を愛してくれますか?~


*****

「じゃ、このプリント悪いが準備室に置いといてくれ」


そう言って恩師である市川啓一(いちかわけいいち)は
オレに分厚いプリントを手渡した。


「これ、なんです?」


そう問うオレに市川先生は「見て分からないのか?」と言った。


「プリントってただのコピー用紙じゃないですか?」


だが市川先生はよく見ろというように
その紙の上部を指差した。


「ここ、名前書く欄ちゃんとあるだろうが」


真っ白いプリント。
もといコピー用紙には確かに名前の記入欄はある。

けれど、他にはなにも印刷されていない。


「なにに使うんですか?」

「なにって、そこにオレへの激励の絵をだな……」


そう言って白髪交じりになった頭をコリコリと掻いて見せる。


「ずいぶん白髪が増えましたね、先生」


昔と変わらない風貌。

肩までの髪を後ろで一つにくくり
無精ひげを生やした顎に手を当てた先生は


「おまえには言われたくないよ」


と豪快に笑って見せた。