「帰ってくるの、やめればよかった?」
隣を一緒に歩く江口愛美(えぐちまなみ)が
オレの顔を覗きこむようにしてそう聞いた。
「アキとの思い出
ここにはありすぎるものね」
答えないオレに
呟くように愛美は言った。
同級生のオレと愛美。
幼稚園の頃から一緒だったオレ達3人。
隣近所に住み
いつも3人一緒だった。
オレの淋しさと孤独を共有する
たった一人の友人に
オレは苦い笑みを落とした。
「でも戻ると決めたのはオレだよ」
アキを失ってこの街から
この風景から逃げ出したのに
やっぱり忘れられなくて
囚われて
ここに戻ってきたのはオレ自身だった。
「無理しなくてもいいよ。
私の前くらい、弱い禅でいていいのよ」
愛美はそう言って
ふわりと淋しげに笑って見せた。



