「禅、なにしてるの?」
現実がオレの肩を叩いた。
次の瞬間、強い風が吹き、砂が舞う。
振り返ったそこに
よく知った顔がいて
オレは首を振った。
「なんでもない」
オレを見上げるその顔に
オレは苦笑して見せて
その横に並ぶように駆け寄った。
「お墓参りの途中で抜け出して。
心配したんだから」
そう言って、見知った顔が言う。
なぜ、そんな顔をするのだろうかと思うほど
彼女は悲痛な顔をしてオレを見た。
「死なないよ」
オレは彼女にそう答える。
そう、どんなに辛くても。
どんなに彼女がいなくて辛くても。
オレは死ねない。
死んではならない。



