ふと携帯を見てみると、ブーブーとバイブが鳴っていた。
ディスプレイには“王子”と覚えのない登録名。
番号を見ても、もちろんさっぱりだ。
不思議に思いながらもその電話にでてみると、低く艶やかな声。
「は?!」
『は?じゃねーし。』
「なんであんたの番号が登録されてんのさ?!」
『俺が勝手にした。』
「はぁ?!」
昨日の出来事を思いだそうとするけど、なかなか思い出せない。
というか、私どうやって家まで帰ったんだっけ?!
『記憶ねぇの?お前確かに少し酔ってたもんなぁ』
「酔…っ?!私酒なんて飲んでないっ」
『俺が飲ましたじゃん』
“あれはウーロン茶じゃ…”
と言えば、“ウーロンハイ”としれっと言い抜かすこの男。
携帯越しからの私の怒りが伝わったのか、男は『ごめーん』と言った。
話し方が、すごくキョウジに似ていて、なぜか電話を切ることができなかった。
心地よく感じてしまった。
この声が。
この気持ちが。
私はまだ、キョウジを忘れられない。
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