あざ笑うような表情も、異様にギラギラしたその目も、普段は押し隠せているようには、とても見えない。
 
とうとう狂気の方に、比重を置いてしまったのかも知れない

「止まった頭では、何も分からないだろう。

何で今、お前が生きてエイジュといられるのか、エイジュが何者なのか」

英樹がエイジュの名前を口にしたとき、浩之は動揺を隠すために、微笑んだ。
 
何で英樹が、エイジュのことや、今の状況を知っているんだ?

英樹にそれを訊かない方がいいことは、分かっていた。

訊かなくたって、言いたければ言うだろうけど、こっちがワカリマセンって態度を見せると、英樹に、癪に障る言動を増やさせるだけだ。

「エイジュは、オレを直接手に掛けて殺すことも、見殺しにすることも出来なかったんだ。

だから、一緒にここにいる。それに、」
 
エイジュは、人を殺すことを命令される立場らしい。

この場合考えられるのは、

「彼女は、殺し屋なんだろ?」
 
浩之にも、これが英樹の求めている答えで無いことは分かっていた。