後方に、誰かいる。

呼吸と心臓が止まる。

それから、鼓動が倍速になる。

微かな足音が、確かに聞こえた。

もう、すぐ傍にいる。

振り返ろうとして、首と背中に、誰かがぶつかってくる衝撃があった。

チクショウ。

また、簡単にスキを与えてしまった。

転びそうになるのを踏みとどまり、体当たりしてきたまま背中に貼り付いている敵の方へ、首をひねった。

敵は、その同じタイミングで顔を上げて、浩之と目を合わせた。

相手の顔がハッキリと分かるほどの、光量がある必要なんかなかった。

その顔。

人を見下した笑いをくっきりと浮かべた口元。

何年会ってなくたって、見間違うハズが無かった。