頭を上げると、真っ直ぐに伸びた木の幹が空に向かってひしめいているのが見える。

「オレは、逃げなきゃ殺されるんだろ?エイジュもそうだ」

車の音が近付いてきて、ヘッドライトの明かりを投げかけながら、頭の上を、ゆっくりと走り去って行った。
 
その音が遠ざかって消えてしまうのを黙って訊いていると、エイジュが口を開いた。

「とにかく今は、少しでも眠った方がいいわ。

休めるうちに休んでおいた方がいいから」
 
さっきの答えにはなってないけど、それはこの場に正しい言葉だと思った。
 
浩之は、土壁にもっと深く背を預けて、廃屋から持ち出してきた、毛布に包まった。
 
この際、考えるのは止めて眠ろう。
 
何の音も無い中で、浩之は目を閉じた。