殺し屋には、体力は必要な要素じゃないのかも知れない。

エイジュの足取りには、疲れが滲み出ていた。

「いいえ。ここは知られているから、すぐに探されてしまうわ。そうされる前に、手に入れておきたいものがあるの」
 
浩之は、その家を見上げた。

高級そうには見えない、脆そうな木材で造られていて、年季まで刻み込まれているものだから、ドアを開けたらショックで崩れ落ちそうに見える。
 
だけど、エイジュの頭には、そんな不安は微塵もないようだった。

彼女は、曇ったガラスのはまった障子のようなドアを、躊躇も無く引き開けた。
 
久し振りに乱入した新鮮な空気が、ホコリを見事に舞い上げる。