でも、それを言うなら、そもそもオレを殺しておけば、ややこしいことは、何も起こさなくてすんだんじゃないか?

どうして、エイジュはそうしなかったんだろう。

オレを人質にして、彼女自身も逃げたいのだろうか。

でも、殺されそうだったオレに、そんな価値がある訳がないし、彼女にそんなものが必要だとも思えないけど。

浩之は、そっと吐息をついた。

とにかく、妙な世界に巻き込まれてしまったってことだけは確かだ。

英樹が関わっているらしいだけのことはある。

「ねぇ、オレにも銃の扱い教えてよ。

護身のためには必要だと思うけど」

ニコヤカに言う浩之を、エイジュは見た。

「いいよ。でも後でね」

とにかく、今は逃げないといけない。
 
浩之は肯いて、足を速めた。