変わりに、

「来て」
 
彼女が、銃を持って無い方の手を差し伸べて言った。

「逃げるのよ」
 
静かな声に添うように、瞳が黒く塗り替えられる。
 
浩之は考えるより前に、反射的に彼女の手を取って走り出していた。
 
ドアをくぐり様に振り返ると、二人のオヤジが横たわって静かに血を流しているのが見えた。
 
ドアは二人を吐き出して、横にスライドして閉まった。

「何で、殺したの?」
 
彼女は振り返って、黙って浩之を見た。

「殺さなきゃ、殺される」
 
そうりゃ、そうかもしれない。