浩之は、思わずその手を振り解きたくなるのを必死でこらえて、おまけにオヤジに微笑んで見せた。

物凄い精神力で、短髪が必要以上に身体に触れてくるのに耐え、浩之を助け起こそうとするのに大人しく従う。

「という訳だ、逃げれば撃つ。いいな」

浩之は、それを言った長髪の方を見た。

殺そうとした時には微塵も見せなかった哀れみを、その目に込めて、浩之を見ている。

浩之は、急に人情家になった長髪に、嫌な思いをする前に、と、気を変えて撃ち殺されないように、ニッコリと笑いかけた。

この状況を、嫌がっているように見えたら困る。

その間、短髪オヤジは、どこからかナイフを抜き出して、浩之の腕に食い込んだロープを切りはじめた。