彼女は、浩之の質問を真っ直ぐな視線で受け止めると、黙ってテーブルに、目を伏せた。
 
この店オリジナルのティーカップが、紅い液体を満たしたまま、そこにある。
 
ここの紅茶は、本当に綺麗な紅色をしているので、浩之は好きだった。
 
ここをお気に入りの場所にしている女の子達はたいてい、紅茶の色なんかよりも、デザインの凝ったティーカップやドライフラワーとレースで装飾された店の雰囲気がお目当てらしいけど。
 
しかし、こんな店に抵抗無く入れて、しかも場違いじゃない男なんて、オレくらいのもんだろうな。
 
浩之は、カップを手に、まだ熱い紅茶をすすった。

唇の触れる、薄い陶器の感触も、おいしい。

派手な絵柄はともかく、このティーカップの作り自体は、浩之の気に入っているのだ。