「何考えてるの?」
 
その声に、浩之は現実に引き戻された。
 
テーブルを挟んだ向かいに、英樹の元彼女がいる。
 
肩まである髪を真っ直ぐに垂らせた、ハッキリした顔の美人だ。
 
英樹が消えてからもずっと、彼女はこのスタイルを変えずにいる。

と、いうことは、こういうのが英樹の好みなのかもしれない。

「せっかく誘ってくれたのに、ずっと考え事してるみたい。」
 
テーブルに、身を乗り出すようにして、彼女は浩之を覗き込んでいる。

そういうポーズをすると身体のラインが強調される。

浩之は、ゆっくりと彼女の方に向き直った。

「あのね、オレ、一つ訊きたかったんだ。

あなた、英樹の何がそんなにいいの?

あなたが彼女だったのって、もう十年も前の事でしょ?

なのに、どうしてまだ、あなたは英樹のことが好きなんて思えるの?

オレにはそれが分からないんだけど」