「兄貴はとうとう、銃を持ってるような相手を、敵にまわしちゃったの?」
 
エイジュは左手でこめかみに触れ、右手の銃を下ろした。
 
頭に響く声は、絶対事項なのに。
 
エイジュは、艶やかな黒に戻った瞳で、浩之を見た。

それから、髪を揺らせてくるりと背を向けると、再び隠れた月が造った闇に、逃げ込んでしまった。

浩之は、音も無く彼女が消えた先を黙って見ていた。

が、哀しそうに呟いた。

どうしてくれるんだ、腰抜けちゃったじゃん」