黙ってみているだけの月が、そこにはあった。

青白く、浅くなっていく夜の闇と、浩之を照らしていた。

浩之は、廃屋の前にいた。

無感覚にココまで歩いてきて、立ち尽くしていたのだ。

体が冷え切っていることに気付いて、廃屋に向かってみた。

前に来たときには、エイジュがいた場所。

そこに、なぜひきつけられたのか、はじめに入った部屋に入ってみて、気付いた。

闇に慣れた目と、月明かりを目いっぱい取り込んでいる窓のお陰で、中がよく見えた。