浩之は、英樹の顔をまじまじと眺めると、ふいにそのカオに、キレイに微笑を浮べた。  
大輪の花が開く瞬間のような、魅惑的で、神秘的なその微笑みは、廻りの音も、景色も、二人の世界から、瞬間的に消失させてしまった。

永遠のような、長い一瞬が生まれる。
 
意思の光が瞳をきらめかせている浩之の目を、その瞬間、英樹は見ていた。
 
これは脅しか冗談だ。

コイツがそんな真似を出来るわけが無い。
 
そう、英樹が自分に言い聞かせ、英樹の顔に嫌な笑いが戻りかけたそのとき、

「バイバイお兄ちゃん」
 
浩之の、色っぽさと聴き間違えそうなハスキーヴォイスが、ゆっくりと静寂を裂いた。