「研究に没頭してたんだな」

「戦争が始まったことも終わったことも知らなかったって博士もこの世の中にはいるらし
いものね」
 
エイジュが言って、そんなことを知っているエイジュがおかしくて、浩之は笑ってしまった。

「あたし、他の研究員が残ってないかチェックしてみるわ。あたしはここで警備員のアル
バイトってことになってるから適任なの」

言って、エイジュは、急いで、並んだ研究室のドアをノックし始めた。

「浩之は、先に武器庫に行ってて。この奥の試薬室ってところよ。戦闘員のIDカードを
使えば、奥の本棚がスライドして、武器庫に繋がるようになっているから」

「分かった」
 
浩之は、言われた方向に身を翻した。
 
必死で、研究員の不在を確かめているエイジュの姿を、一度だけ振り返って見た。