「大丈夫よ。司令区用の非常ベルを鳴らせただけだから」

そう、か。

エイジュは、微笑んだ。

「じゃ、付いて来てね」

エイジュに言われるまま、浩之は中に入ってみた。
 
カビ臭い。

思わず呼吸を止めて床の下へ身を沈めた。
 
そこには、しゃがんだ態勢でギリギリ移動が出来る程の高さのスペースが開けていた。
 
エイジュが入り口を塞いだので、上からの光が消えた。

浩之は暗闇で動きを止めた。
 
何も見えない闇、というのは判断力を一瞬奪うらしい。

じっとしているとエイジュがそばにきた気配がして、ペンライトの光がついた。