暗くて足元はよく見えないが、降り慣れた鉄の階段を、軽やかな音を立てて降りた。

最後の段からアスファルトに飛び降り、浩之は今出てきたアパートを何気なく見上げた。

少し離れたところにある街灯の明かりが、かろうじて壁を照らしている。
 
築二百年くらい経ってそうなくせ、壁はコンクリートで覆われている。

その壁にはくっきりとひびが走っているけれど。
 
浩之は、見慣れたひびから目をそらせて、道を真っ直ぐに歩き出した。
 
この先の道を右に行けばコンビニがあり、左には、夜中もやっているスーパーがある。
 
どっちに行くかな。
 
迷って、歩みを少し緩めた。