それを斜め横から浴びているせいで、男の顔がよく見えた。

上司の一人にいそうな、普通の顔をしていた。

浩之は、ふっと彼に笑いかけた。

これが浩之の、諦めの表情なのかも知れない。

何となく、両手を挙げて、彼の正面に出て行く。

「エイジュはもうすぐここにくるよ」

正面に立つと、彼は明かりを背にしてしまうので、表情が見えなくなった。

そのかわり、引き金に掛けた指に力がこもるのも見えなかった。

サイレンサーを付けていない、男の銃は、発砲した。

浩之の体は崩れ落ちて、廊下に転がった。

こんなところで、誰にも何にも知られないまま死んで行くのか。