静かにしろってか。
 
浩之は、立ち止まって辺りを見た。
 
数メートル先の木々から先は、闇に溶け込んでしまっているし、音も無い。
 
その中でエイジュは立ち止まって道の上を振り仰いだ。
 
手に銃を構えているのは見えなかったけど、静かな発射音がした。
 
アスファルトの上にいたらしき人物の、うめく音が微かにした。

「逃げるわよ」
 
エイジュは、浩之の腕を取ると、走るように促した。

「急所は狙えなかった」
 
エイジュの声と同時に、弾がすぐそばの空気をかすめていく音がして、目の前の木に何かめり込んでいった。