浩之はその一瞬、長年生きてきた、堂々と直立するクヌギを、無意味に傷つけることから現実逃避したのだ。

「まぁ、サイレンサーを付けていたら、少し狙いが甘くなるようだから、そういうことにしときましょう」
 
呼吸すると痛みが走るので、浩之は、息を止めて、ゆっくりと銃を持った腕を下げた。

「これじゃ、例え自分の身が危なくても、人に向かって引き金を引けるかどうか怪しいもんだ」
 
エイジュは、苦笑を浮べている。

「そうだね」
 
って言って。

「仕方が無いわね。浩之はあたしが守るわ」
 
浩之は、休もうとしてエイジュの方へ戻りかけ、突然唇の前に人差し指を立てたエイジュを見た。