五メートル程先にある、生きた木を、エイジュは指差した。
 
街の明かりを背にする位置に立っている、真っ直ぐな、クヌギの木だ。
 
浩之は、クヌギを見つめながらそちらに向き直った。

「言う通りにして。頭の中で撃つ的を決めて」
 
浩之は、目の前のクヌギの肌の、でこぼこした一点を見つめた。

「その的、標的に対して四十五度位の角度で立つの。

首は真っ直ぐにして標的を見て」
 
エイジュの言葉は、浩之の体のあちこちにピアノ線をつけて操るように、正確に浩之を動かしてゆく。