『だって、あさっては英樹の誕生日じゃないの』

受話器の向こうの母親の声に、浩之は心の中で溜め息をついた。
 
端正だと言えなくも無いそのカオには、中性的な、というか女性的な雰囲気があり、それが、浩之の魅力の一つになっている。

「分かってるよ。だけどどうしても帰れないんだ。仕事なんだよ」

『日曜なのに?』

「そうなんだ、悪いね。じゃあ。」

“だいたい、当の本人だって来ないじゃないか”

その言葉は飲み込んで、浩之は受話器を置いた。