自分がそこにいるっていう生々しい感覚に、少し戸惑ってしまう。

「どうかした?」
 
覗き込んだ、エイジュが言った。
 
すぐそばにその、エイジュはいる。
 
それは、アンドロイドだけど、エイジュだ。

「何でもない。逃げなきゃって感覚が甦って怖くなっただけ」
 
浩之は、そう言った。

それも本当だったから。
 
もう、全て英樹に操られているのだとしても構わないと思う事にした。

「オレ達は、どのくらいの人数を敵に回してるの?」
 
さっきの建物を所有しているほどなんだから、相当大きな組織なのだろう。
 
その組織の中のブラックリストの、おそらくトップに自分たちは載っているのだろう。
 
浩之の恐怖心は、急にボヤけてきた。
 
でも、リアルな感情が再び遠のいた訳ではなかった。
 
容易に想像出来る敵の数に、怖さが麻痺していったようだった。