「あーあ、今回は美憂か…」

遼が発した言葉を聞いた途端に、不安が募る。

「な、何が…?」

「標的。」

「何せ大智の彼女だからな…光紀が見逃すわけねぇと思うけど。」

ヤバい…。

標的?

完璧に危ない感じでしょ。

どーすんの?学校まで乗り込んできて、乱闘騒ぎ起こしたような人だよ?


「今だけ別れとくって手もあるけど、光紀なら見破りそうだしな…」

「美憂、1人で行動しちゃダメだからね。」

そりゃあもちろん!

危ない目に遭わないなら、24時間でも3人と一緒にいるよ!

「俺から離れるな。」

「うん!」

「朝行くときも、帰りも1人は禁止!」

「はい!」

「学校でもだぞ。」

「分かった!」

今日から1人になるのは家にいるときだけ。

外にいるときは、いつも誰かと一緒にいよう。


「あ、ねぇ大ちゃん、今日はどうやって帰ったらいいの?」

「槙、送ってやれ。」

「俺が送る。」

遼が「送る」と言った瞬間、大ちゃんの顔が喧嘩をするときのような表情に変わった。


「大ちゃん…?」

「………何でもない、じゃあ遼。送ってやれ…」

「りょうかーい」

やっぱり遼は謎だ。

こんなに寒いのに、自ら送るだなんて……あたしなら絶対しないね。