「俺はお前のこと、嫌いじゃない。…素直じゃないんだよ…俺は…」

嫌いなくせに…

「いつも思ってる事と逆の事しか言えねぇ…」

大嫌いって言ったのに…

「分かってくれとは言わねぇから…それだけは知っててほしい」

何で…?


また信用しちゃうじゃない…

『アホ』

『バカじゃねぇの』

『黙れ。』

『うるせぇ。』

何回言ったか分かってる?

全部反対の事言ってるなんて、言ってくんなきゃ分かんないよ…

「うるさいとか、ウザいとか…1回も思った事ねぇ。」

「っ…言ってくんな、きゃっ…分かんないよ…!」

「悪かった、女は苦手なんだよ。扱い方が分かんねぇから。」

今ここにいる大ちゃんはほんとに大ちゃん?

いつもじゃ考えられないくらい、素直で優しい。

転校初日に会ったときのような感覚、大ちゃんの本当の優しさが見えてきた気がした。


「…俺のこと嫌いでいいから、無視だけはすんな。」

「分かっ、た…」

そういった瞬間に後ろから聞こえた声。

「…美憂…?」

優しい特徴のある声。

一瞬時が止まったような気がした。