何より、トマトと玉ねぎがねーと夕飯作れねーんじゃねーの?

わざわざ早退して帰ってきた娘に頼むくらいだし。

「遼、金払って来い。」

振り返ると、トマトを持っている槙。

「ふっ……似合わねぇ。」

「笑うなよっ、つーかお前さっさと行け。」

「はいはい。」

トマトと玉ねぎを両手に抱え、レジに並ぶ。

こんな不良がトマトと玉ねぎってなぁ…

絶対変。

「350円です。」

無言で金だけ払って、袋を持って早歩きで槙のところへ向った。


「遼、お前女装しろ。」

「………はっ?」

今こいつ何て言った?

女装?遂に頭おかしくなったか?

「おいおい、頭大丈夫か?何だよ女装って」

「男の家に泊まるって分かったら心配すんだろ?」

「だからって何で俺が!」

「俺に女装が出来ると思ってんのか?」

確かに…槙背高いし。

女装なんか絶対似合わねぇ。

それに比べて俺は…、中性的な顔してるし。

背低いし…

「で、でも…髪型とか服装とか。」

「何のために学校の近くのスーパーにしたと思ってんだよ。」

「??」

どういう意味か分からないというような顔をしていた。

「演劇部。」

「あ……」

「カツラと服借りてきてやるよ。」

そうか、うちの学校には 演劇部があった。最悪。

槙の方を見ると、既にもういない。学校のほうへと、歩き出していた後だった。

「覚えてろよ。」

そう呟いて、槙の後を追いかけた。