「だから寝てるって…」

『今、どこだ?』

声が怒ってる。

絶対怒ってる。


「道のど真ん中です……」

『お前今日言ったこともう忘れたのか。』

「いえ、忘れてません…」

だってまだ真昼だよ?

こんな時間にそんな怪しい人うろついてるわけないのに…

『バカだろ。』

「違う。バカじゃない。」

『じゃあアホか?』

「アホでもない!」

『わざわざ遼に家まで送らせた理由が分かんねぇのかよ。』

「だってお母さんがー…」

『あ?』

「買い物行ってきてって言うんだもん…」

『俺が今から行くから、なるべく人通り多いとこいろよ。』

「えっ、用事は?」

『終わった。』

「そっか、じゃ………っ!」


気付かなかった。

後ろから近付いてきてた黒い影に。

抵抗する間もなく、何だかよく分からない薬品を嗅がされる。


『美憂!!』

最後に聞いたのは、大ちゃんがあたしの名前を必死に呼ぶ声。

そこであたしの意識は途切れた。