バス停で待つこと数時間、辺りはすっかり暗くなっていた。

寒そうに震えるのぞみはコートのポケットに両手を突っ込み暖をとる。

「車に乗っていなよ」と、ぼくは言った。

「大丈夫だから」声を無理矢理だしたように言った。

それから、のぞみは続けて、「河内さん、大丈夫かな?」と言った。

「大丈夫だよ」

「本当に大丈夫?あんなに取り乱してたんだよ」

たしかに河内百合があんなふうに取り乱すことなど、ないだろう。

だけど、のぞみの過度に心配する姿のほうが気掛かりだ。

過去に何かしらあったのか?

のぞみの過去。

知りたいような気もするし、知りたくない気もする。