車内には、河内百合とみずきの姿がある。

あの日、のぞみのお使いを皮切りに、ぼくは河内百合を送り迎えするようになった。

そのほうがお互いに都合がよかったからだ。

お互いじゃなかったかも知れないけど、ぼくには都合がよかった。

のぞみのリクエストに応えるには、女性の助けがぼくには、必要不可欠だった。

デリケートなお願いもそうであったが、プライバシー的なお願いも、そうだ。

他人からみれば、ほんの些細なことなのかも知れないが、ぼくにはできない。

少女マンガや女性週刊誌を買うことは、エッチな雑誌を買うよりも、抵抗があった。

だから、ぼくは、河内百合と、ちょっとした取引をしたのだ。

送り迎えするかわりに、のぞみのお使いを代行してもらうという。

ぼくは、有りのまま河内百合に伝えた。

そうしないと、河内百合が断るのが手にとるようにわかるから。

「しょうがないね」そういって河内百合は了承してくれたのだった。