翌朝。
朝食の支度をしていると、お母さんが帰ってきた。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
お母さんは私に向かって微笑みながらそう行った。
そんな瞬間に、私は幸せをまた感じる。
でも今は、そんな場合じゃないんだ……。
昨日見たインターネットの記事を思い出す。
「お母さん。」
「何?」
着替えが終わって席に着きながらお母さんは私を見る。
「ドナーカードのこと、どう思う?」
「何?学校の宿題か何か?」
「ま、そんなとこ……。」
「お母さんは賛成派ね。でも反対派の意見にも納得できるとこはあるわ。」
他人の臓器を他人に譲る。
それは、あっていいことなのだろうか?
近年、医療技術の発展で日本人の平均寿命は大幅に伸びた。
それが、いいことなのか、悪いことなのか。
「周りからしてみれば、大切な人には、少しでも長く生きてもらいたいと思うでしょ?」
お母さんは、ふと、飾られた颯太……お父さんの写真を見ながら続ける。
あの日以来、我が家にはお父さんの写真が飾られていた。


