「部屋を用意しよう。今日はゆっくり休むといい、私はこれ以上抵抗する気はない。」
  エレジーはヤースを呼び、
 「城の様子はどうだった?」
 「誰ひとり抵抗する意志がないようで、気持ち悪くなるくらいの無血開城でした。戦闘がないのはなによりなんですが…今までの事を考えると…。」
 「罠かもしれない、と言いたいのか?」ヤースは無言で肯定した。
 「たが、警戒していても仕方ない。休める時には休んでもしもの時に備えろ。」エレジーはヤースの肩を叩き自分の部屋へと足を向けた。
  人々が寝静まった頃、フェイは部屋を出た。しばらく歩いていると、庭に着き土が盛り上がっている場所の前で足を止め、
 「デイル。必ずラックを討つからな。もう少し待っていてくれ。」突如地面が揺れ始めた。フェイはその場に膝をつきながら体勢を低くした。しばらくして揺れが弱まり、フェイは走り出した。
 「さっきの揺れは何だ!何が起きたんだ?」エレジーは廊下でフェイを見つけて問い詰めた。
 「奴が朝方には蘇るかもしれん。タガールが来ていたらしいな。ラックもグルだろう。急ぎ準備をし、城の奥の丘を目指せ!そうすれば導かれるだろうから。」フェイは言い終わるのと走り出した。エレジーは部屋に戻り準備をして部屋を出ると、
 「エレジー様。一人では行かせませんぞ。」エレジーは軽く溜息をつき、
 「私について来い!遅れるなよ。」エレジー達は走り出した。
  玉座の間に金髪の女性スターツと、タガールに似た雰囲気を持つ男が話し合っていた。二人の空気は非常に重かった。
 「何故国を出られたのですか?」
 「奴の抑止力になるためだよ。」
 「タガール様の事ですか?」
 「あぁ。お前はどうして来たんだ?城に残っていればよかったものを。」
 「ラック様を連れ戻しに来ました。」
 「国を裏切った俺を、か?」
 「はい。」
 「お前に怨まれる事したか?俺の処刑がそんなに見たかったのか?」
 「確かにそうなるかもしれませんが、私も弁護しますし、簡単に処刑されるとも…。」
 「いや。言うよ。あいつはそういう男だよ。近くにいた割には、分かってないだな。」
 「お前は記憶を受け継いだ。だが、昔の事は覚えてない。そうだな?」スターツはただ頷いて答えた。