ランク国物語

 「一応陛下への報告書送る使者は出しましたが、このまま返事が来るまで待つ気無いでしょ?エレジー様」褐色の肌に白い髪に白い髭をたくわえている生き生きしている老将が、木に寄り掛かっている赤髪で腰まで届くほどの長さの女性に尋ねた。
 「無論。何のために河を渡ったんだ?ん?」エレジーと呼ばれた女性は年長者に対する礼儀を無視して答えた。
 「あの河を渡れるの我々だけでしょうな。長年苦しめられましたからな〜。」
 「あの程度の事も出来ないなんて方がおかしいのだよ。ヤース。」
 「上流の支流をコントロールして本流の勢いを殺すなんて…。ヤース・ダン・シグマ一生連いていきますぞ!」
 「寄るな!そろそろ行くぞ。」エレジーは立ち上がり馬に乗った。空は夕暮れであった。
  馬が駆けること数時間。ベルカント城が見えてきた。
 「見えてきましたようですね。では、ベルカント卿偵察をお願いしたい。」腰まで伸びる赤髪の女性が、黒髪で頬に深い切り傷のある男に言った。
 「…分かった。では、数名借りますぞ。」
 「どうぞ。」ベルカントは、近くにいた兵士に一言二言告げ、馬のもとに向かった。しばらくして、四人ほど近づき、ベルカント城へと足を向けた。
 「ベルカント城には近づくなよ。敵に気づかれては意味がない。」ベルカントは部下に注意しながら進んでいた。
 「そろそろ戻るぞ。」
 「はっ!」四人同時に答えた。
  第三派遣隊キャンプの中の一つのテントの中に三人の男女がランプの光の中で、地図を見ながら話し合っていた。
 「なるほど。お疲れ様でした。ベルカント卿。」
 「いえいえ。リフレント卿。あの城は攻守共に完璧ではあるが長期戦には弱かった。今ではそうでもないようだが…。」
 「攻略方法はあるのですかな?」
 「ベルカント城に備わっている大砲の飛距離はかなり広い。飛ばすだけなら10kmは飛ぶだろうし、かといってこちらから仕掛けるにも城まで届くほどの兵器も無い。もしも届いたとしても城壁を破ることは不可能だろう。一点集中砲火でしか壊せんだろう。ダン卿。」
 「ん〜まだ試作段階なのだが、計算上では可能な物があるんですが?何分試作段階なもんで、時間と安全性に問題があるんですが…賭けてみますか?ベルカント卿?」
 「それしかないのなら。で、私は何をすればよいのかね?リフレント卿。」