学校に行き交う生徒の中、僕は溜め息をつきながら歩いていた。

「斎賀」

「おはよう、城島」

「今日も、可愛いな」と耳元で囁かれる。

「五月蝿い!黙って歩いて下さい」

他の生徒に、聞こえるじゃないか…。

「斎賀?何怒ってるんだ」

「怒ってない」

本当は落ち着かないんだ!こんな人目が付く所では、甘えないでほしかった。

僕だって城島が好きなんだ…甘く囁かれたり、甘えられたら…嬉しいに決まっている。

人の気も知らないで…城島のバカ!

僕はあの時、城島を拒む事が出来なかった。

思えば、初めから城島に惹かれて居たのかも知れない。

そう、僕達は人には言えない関係を共有していた。