『…ってことで、借りてくから。』


瞬間、腕を捕まれた。


そして、引っ張られるようにしてその場所から連れ出される。


ミチに向かって伸ばした手はもちろん届かず、代わりにパクパクと動く口を返された。



『―――意味わかんないんだけどー!!』



あたしもだよー!!


もちろんそんな声は助け舟にさえならず、ミチとの距離は否が応でも離れてしまう。


帰宅する生徒達で溢れかえった廊下の真ん中を我が物顔で歩くエイジに引っ張られているあたしは、
もちろん人々の注目の的になり。


悲しみに打ちひしがれるあたしは、好奇の目を向けられ。


もぉ、お嫁に行けない以前に、学校にさえ来れない。



「―――あのぉ!!
自分で歩けますから、離してくれませんか…?」


『…逃げない?』


勇気を振り絞って声を上げると、エイジはやっと足を止め、振り返った。



「…逃げないから。」



もぉ、どうなっちゃっても良い。


てゆーか、抵抗することさえ怖い。


あたしの返事を聞いたエイジは、やっと掴んでいた腕を離してくれた。


その瞬間、安堵のため息をつく。



「…てゆーか、どこにラチる気ですか?」


『…どこが良い?』



って、あたしに聞くなよ。


つーか、ノープランなのに引っ張って来たの?


そのおかげであたしは、死ぬほど恥ずかしかったんですけど。



「…あのねぇ、エイジ先輩―――」


『エイジ。』


「…ハ?」


『…って呼べって言わなかったっけ?』



こ、怖いから!


あたしの言葉を遮り、相変わらずの命令口調でこちらを睨む。