散らかりすぎた脳みその中を整理出来ずに戸惑っていると、唇に柔らかい感触が降って来た。


瞬間、散らかりすぎた物は吹っ飛び、代わりに真っ白になってくれた。



『…目くらい瞑れば?』


「―――ッ!」



論点は、ソコですか?


てゆーか、いきなりキスなんかすんなよ!



『…てゆーか、まだ名前聞いてなかったよね?』



…オーイ。



『あ、携帯教えろよ。』



……オーイ。



『…てゆーか、“先輩”じゃなくて“エイジ”って呼べよ。』



………オーイ。



「…って、オイ!」


やっと声を出したあたしに、エイジはポカンとしたまま、携帯を取り出していた手を止めた。



『…何?』


「…いや、“何?”じゃなくてね?」


『あぁ、今すぐ襲われたかった?』


「―――違う!」


こめかみを押え、強く言う。


すると次第にエイジの顔は怪訝なものに代わり、その瞳はあたしを強く捕らえた。


その瞬間、言おうとしていた言葉が出ない。



『…携帯。』


目の前に手の平を出され、振り払うように唇を噛み締めた。


突き出すように携帯を渡すと、エイジは速いスピードでそれに打ち込んでいく。



『…帰りのホームルーム終わったら連絡してやるから。
マクったりしたら、どーなるかわかってるよね?』


あたしの手の上に携帯を返し、不敵に笑ってエイジは背を向ける。


“連絡してやる”だとぉ?


“どーなるかわかってるよね?”だとぉ?


言いたいことを整理しているあたしを横目に、エイジはさっさと保健室から消えた。


怒りをぶつける場所を失ってしまったあたしはただ、立ち尽くすことしか出来なかった。