壁に背をつき、その冷たさで早くなった心臓を落ち着かせた。


吐き出す息は白く、その行き着く先を辿るように天を仰ぐ。



『…須藤さん…?』


「―――ッ!」


呼ばれた方を見ると、近藤くんが小走りに近づいてきた。


一度深呼吸をし、あたしは口を開く。



「…あのね?」


『ちょっ…ちょっと待って!』


急に制止され、意気込んでいたあたしは思わず拍子抜けしてしまう。


でも、言わなきゃいけないんだ。



「…ごめん、聞いて欲しい。」


これじゃ、どっちが告白してんのかわかんなくなる。


見上げた瞳は、しっかりと近藤くんを捕らえる。



『…わかった。』


返事を聞き、あたしは再び練習通りの言葉を紡ぐ。



「…あたし実は、好きな人が居るんだ。」


『―――ッ!』


瞬間、近藤くんの時間は止まってしまったように、目を見開いたまま固まられてしまった。


自分で告げていて、心が痛くなる。


だけど、ちゃんと“ごめんなさい”まで言わなきゃいけないんだ。



『―――亜紀!』


「―――ッ!」


上から呼ばれ、驚いて思わず顔を向ける。


瞬間、睨むエイジの顔に言葉を失くした。



…何で…?


いや、上の階だし降りてくるのは当然だけど…。


軽くパニックになってしまったあたしの思考回路は、停止してしまった。