ひとつため息をつき、携帯を取り出した。


相変わらず、エイジからの着信はない。


メールだって、あの日以来ない。


そんな悲しい現実を教えてくれる携帯のアドレス帳から、エイジの名前を探し出した。



「…掛けるよ…?」


まるで自分自身に言い聞かせるようにして、通話ボタンを押す。



―プルルルル、プルルルル…

『ただいま、電話に出ることが出来ません。
ピーと言う発信音の後に―――』



…また…繋がらないの…?


無意識に終話ボタンを押すと、鼻腔の奥がツーンとしているのがわかる。


そんなあたしの顔を覗き込むようにして、ミチが聞いてきた。



『…亜紀…?』


「…もぉ嫌だよぉ…。」


瞬間、自分でも驚くほどに、子供みたいに声を上げて泣いた。


一度出た涙は止めることが出来ず、そんなあたしにミチはため息を向ける。



『…もぉ、良いじゃん。
別れなよ、エイジ先輩と。』


そして、ティッシュを差し出してくれた。


だけど何も言わないあたしに、ミチは言葉を続ける。


『…好きだから苦しいんでしょ?
だったらもぉ、別れなよ。』


「―――ッ!」


『…向こうは何考えてるか知らないけど、振り回すのも大概にしろって話だよ。』



ホントにそうだ。


明日、あたしはアイツと別れる。


携帯についたエイジから貰ったストラップだって、投げつけてやるんだ。


王様で、我が儘で、子供みたいで。


モテて、女に囲まれて、遊び歩いてて。


エイジなんか、大っ嫌いだ。