暁の王は翡翠の姫に永遠の愛を紡ぐ

 よく見ると、泉の傍らには薄い花弁を纏った白い花がたくさん咲いている。そこから香る儚く優しい香りーー何の花だろうか。


その時、背後から声がした。



「それは白月光の花だよ。夜に花開いて、月光蝶が蜜を集めにくる。その蜜はとても甘美らしい」

甘栗色の髪の少年はにこりと微笑む。背中には籠を背負っていて、色んな植物が乱雑に入っている。腰にはポーチがついており、さらにポケットがいくつもある。



ーー誰だろうか。



ああ、と少年はぺこりと頭を下げた。


「申し遅れました。僕はリオン・シルベリア。植物の研究と採集をしている学者です」


今度は自分の番ーー何を、どう言えばいいのだろう。内側からする声の少年と心でやり取りをしていたくらいで、現の者とはまだ一度も話したことはない。